物理学による運命論 ラプラスの悪魔 vs 量子論

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宇宙が始まったときに運命は決まっている?

高校で習うニュートン力学(古典力学とも呼ぶ)は、質点(大きさがない理想的な物体)の運動は初期値である初期位置と初速度、受ける力によって完全に決定される、ということを主張している。

この世の物質は質点(原子ないし素粒子)が集まってできたものだと考えることができる。

  • 全ての質点の初期値と宇宙の始まりにおける神の一撃(力)を全て知ることができ、
  • それらの運動方程式を全て解くことができる

仮にこれら2つが可能な者が存在するのであれば、”そいつ”は過去から未来永劫、全ての運動を予測することができる。”そいつ”はラプラスの悪魔と呼ばれている。

つまり、ラプラスの悪魔が存在するかどうかは一旦棚上げしても、ニュートン力学は僕らの運命は宇宙が始まったときから決まっているし、変えることもできない、ということを示しているのだ。

努力や思い切った行動によって自分の未来を変えることができるんじゃないのか!、と反論が聞こえてきそうが、きみが努力するかしないかも、宇宙が始まるタイミングで既に決まっていたのだ。運命は変えられないのね…。

人間は「ラプラスの悪魔」になれない

計算能力や測定技術の向上。科学技術が進歩していけば、人間はラプラスの悪魔になれそうに感じないだろうか?しかし、それは原理的にあり得ない。

「バタフライ・エフェクト」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、ブラジルの蝶の羽ばたきというクソショボい力がアメリカで竜巻を引き起こし得る、という話である。複雑系の科学の「初期値鋭敏性」、つまり初期値のちょっとした違いが大きく結果を左右することの分かりやすい例え話だ。

空間は実数として表現できる。厳密に測定しようとするのなら、質点1つの位置でさえ無限桁が必要となる。つまり、いくら科学技術が向上しても、測定誤差を完全に排除することはできないのだ。このちょっとした誤差によって、シミュレーションの結果は大きく変わってしまう。人間がラプラスの悪魔になれる日は来ない。

量子力学の登場で「ラプラスの悪魔」は死んだ

ニュートン力学によれば、ラプラスの悪魔がいないとしても、宇宙の運命は予め決まっていたことには変わりない。

しかし、幸いなことに、ニュートン力学は厳密には正しくないということが分かっている。ミクロな世界は量子力学に取って代わられた。

量子力学によれば、原子のようなミクロな物体は同時に波でもある。したがって、原子は揺らいでいて、位置と速度(運動量)を同時に知ることは原理的に不可能だ(不確定性原理)。

つまり、初期値は確定できない。「全ての質点の初期値」そのものが定まっておらず、従って、質点の運動は確率によって変わる。ラプラスの悪魔になる条件の1つ目は達成し得ないのだ。私たちの運命は不確定で揺らいでいる!未来は変えられる?!

アインシュタインが否定した量子論

初期値が揺らいでいる?未来は未確定?そんなバカな。相対性理論を創始した天才、アインシュタインは「神はサイコロを振らない」と言ったらしい。アインシュタインはユダヤ教徒であり、理性的な神が世界を創ったと信じていた。理性的な神が確率に支配されるデタラメな世界を創るはずがない。こうしてアインシュタインは最後まで量子力学を信じることができなかった。

ちなみに、ニュートンも神の意思を知りたいと願っていた。天動説が主流の世間。地球は宇宙の中心であり、特別な場所のはずだ。それを物理学で裏付けられるのではないかと考えていたそうな。しかし、結果として、宇宙はどこも平等であり、地球が特別である根拠はなかった。特別な座標系などなかった。

物理学の研究とは、理性的な創造主たる神の意思を知ろうとする宗教行為でもあったのだ。確率は信じるにはデタラメ過ぎたのだ。

確率は人間には理解できない

しかし、大天才アインシュタインに限らず、量子力学を理解(納得)できる人類は存在しない。なぜなら、人間は因果関係しか理解できないからだ。

原始の生物の脳はある刺激Aに対してBという反応をするだけ、つまり反射反応を起こすためだけの単純なものだった。「AならばB」とは正に因果関係のことだ。

人間はもっと複雑な思考ができるように進化したが、脳のベースの部分は相変わらず因果関係しか理解することができない。確率は数字としては理解できても、腹落ちしないのはことためだ。

だから、多くの人が宝くじを買ってみたり、単なる事故に対して運命や呪いなどの理由をこじつけてみたりするのだ。

ヒトが未来が見通せるほどこの世界は単純にできていないのかもしれない。

物理学
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