数学の天才! ガウス少年 ~等差数列の和の公式の考え方~

数学
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対象読者

  • 数学王ガウスの逸話を知りたい方
  • 等差数列の和の公式の視覚的イメージを理解したい方

結論

本記事によって、等差数列の和の公式を直観的に理解することができる。

以下でガウスの逸話を紹介し、それが実は高校数学で習う等差数列の和の公式を利用した解き方であることを説明する。等差数列の和について、

  1. 視覚的なイメージ
  2. ガウスの方法に倣った、公式の導出

を順に見ていく。

小学生の頃のエピソード

ガウスは後に数学王と呼ばれた男である。

小学校の担任の先生が忙しかったので、解くのに時間がかかる問題を出して、その隙に仕事を処理しようと考えた。

しかし、その問題をガウス君は一瞬で解いてしまった。

問題の内容

1 + 2 + … + 100を求めよ。

ガウス君の解答

ガウス君は即答した、5050であると。101が50個あるからだ。

1,2,..,100を以下のように並べると、

  • 1 + 100
  • 2 + 99
  • 3 + 98
  • 50 + 51

確かに101が50個ある。

このような並び替えを即座に思いつくとは…。これが天才か!

この問題を等差数列として捉える

実は、ガウス君のやったことは、等差数列の和の公式を適用することと同じだ。

等差数列とは、\(i\)番目と\(i+1\)番目の差が常に同じ数列のことだ。つまり、\(a_i\)を数列、\(c\)を定数とおくと、等差数列は以下を満たす。

$$ a_{i+1}  –  a_i = c $$

これは、両辺を\(1\)番目から\(n-1\)番目まで足し合わせることで、以下のように書き換えられる(※)。

\begin{eqnarray} &&\sum_{i=1}^{n-1} (a_{i+1} – a_i) &&= \sum_{i=1}^{n-1}c \\ &&\Leftrightarrow a_n – a_1 &&= c(n-1) \\ &&\Leftrightarrow a_n &&= c(n-1) + a_1 \tag{1} \end{eqnarray}

式(1)は等差数列の一般式であり、\(a_1\)を初項、\(c\)を公差と呼ぶ。

ガウス君が与えられた問題は、\(c=1, a_1 = 1\)の時、つまり\(a_n = n\)という等差数列を1番目から100番目まで合計せよ、というものだったのだ。

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※総和\(\sum\)について

数学では、総和をギリシア文字\(\sum\)で表す。

例えば、\( 1 + 2 + 3 + \dots\ + 100\)は総和の記号で書き直すと\(\sum_{i=1}^{100}i\)となる。

式(1)の式変形\(\sum_{i=1}^{n-1} (a_{i+1} – a_i) = a_n – a_1\)を丁寧に書くと、以下のようになる。\(\require{cancel}\)

\begin{eqnarray} &&\sum_{i=1}^{n-1} (a_{i+1} – a_i)\\ &&= (\cancel{a_2} – a_1)\\ &&+ (a_3 – \cancel{a_2})\\ &&+ \dots\\ &&+ (\cancel{a_{n-1}} – a_{n-2})\\ &&+ (a_n – \cancel{a_{n-1}})\\ &&= a_n – a_1 \end{eqnarray}

等差数列の和の公式

等差数列の和\(S_n = \sum_{i=1}^{n}a_i\)は以下のように書き換えられる。

$$S_n=\frac{1}{2}n(a_1 + a_n) \tag{2}$$

これが等差数列の和の公式だ。

ガウス君の問題だと、\(n=100, a_1=1, a_{100} = 100\)なので、

\begin{eqnarray} S_{100}&&= \frac{1}{2}100 \times (1 + 100) \\ &&= 5050 \end{eqnarray}

というように、公式(2)を使えば、この問題は瞬殺できる。天才ガウス君は前提知識なしでこの公式を瞬時にイメージすることができたのだ。末恐ろしいガキよ…。

等差数列の和の視覚的なイメージ

この公式はビジュアルで考えると分かりやすい。

図1.ガウス君による数列の並び替え

ガウス君の問題の数列(\(a_i = i)\)をイメージしていただきたい。

数列のそれぞれの値を長方形として捉える。すなわち、\(幅=1、高さ=数列の値\)とする。

一定の長さずつ高くなっていく長方形(等差数列)を並べると三角形みたいになる(図1.左)。

これをガウス君がやったように並べ直すと、

  • 幅は数列の個数nの半分、
  • 高さは初項\(a_1\) + 末項\(a_n\)

の長方形になる(図1.右)。

\begin{eqnarray} この長方形の面積 &&= \frac{n}{2} \times (a_1 + a_n) \\ &&= \frac{100}{2} \times (1 + 100) \\ &&=5050 \end{eqnarray}

となり、ガウス君の解答と一致する。

このように、等差数列の和の公式はこの長方形の面積を求めているのだ。

より一般には台形の面積を求めることになる

というか、折り返して長方形に変形せずとも、直接面積を求めても良い。すなわち、変形前の数列を台形として扱えば良い。台形の面積の求め方は以下だ。

$$台形の面積 = (上辺 + 下辺) \times 高さ \div 2$$

これは等差数列の和の公式(2)と似ていないだろうか。そう、\(上辺 = a_1、下辺 = a_n、高さ = n\)とみなせば、台形の面積と等差数列の和は一致する。一般的には、台形の面積を求めることが、等差数列の和を求めることに対応する。

等差数列の和の公式の導出

上で見たように、一般の等差数列\(a_i\)は式(1)のように書くことができた。これをガウス君の考え方を元に、公式(2)を導出する。

等差数列\(a_i\)をガウス君と同様に並び替える。すなわち、\(a_i\)のアタマとケツを順々に足し合わせるような数列\(b_i\)を考える。式変形の途中で、等差数列の一般式(1)を用いる。

\begin{eqnarray} b_1 &&= a_1 + a_n \\ &&= a_1 + (c(n – 1) + a_1) \\ &&= c(n-1) + 2a_1 \\ b_2 &&= a_2 + a_{n-1} \\ &&= (c(2 – 1) + a_1 ) + (c((n -1) – 1) + a_1) \\ &&= c(n-1) + 2a_1 \\ &&=  a_1 + ( c(n-1) + a_1) \\ &&= a_1 + a_n \\ &&… \\ b_i &&= a_i + a_{n – (i – 1)} \\ &&= (c(i – 1) + a_1) + (c(n – (i – 1) – 1) + a_1) \\ &&= c(n – 1) + 2a_1 \\ &&=a_1 + a_n \end{eqnarray}

以上より、\(b_i\)は番号\(i\)に依らず、常に同じ値になることが分かった。視覚的イメージで述べたように、長方形の高さは一定であるのと同じだ。ガウス君の時は常に\(b_i = 101\)だった。これをカッコよく一般に書くと、\(b_i=a_1 + a_n\)となる。

よって、以下のように計算できる。

\begin{eqnarray} 2S_n &&= 2\sum_{i=1}^{n}a_i \\ &&= \sum_{i=1}^{n} (a_i + a_{n – (i – 1)}) \tag{3}\\ &&=\sum_{i=1}^{n} b_i \\ &&=\sum_{i=1}^{n} (a_1 + a_n) \\ &&=(a_1 + a_n) \sum_{i=1}^{n} 1 \tag{4} \\  &&=(a_1 + a_n) \times n \\ \Leftrightarrow S_n &&= \frac{1}{2}n(a_1 + a_n) \end{eqnarray}

よって、公式(2)を導けた!

(3)では、ガウス君の並べ替えを行った。(4)では、\(a_1+ a_n\)は添え字\(i\)によっては変化しないので、定数と見做すことができ、総和\(\sum\)の外に出した。

等差数列の和の公式は、ガウス君の計算方法を一般の変数として表し直したものに過ぎないのだ。

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