[公式を暗記したくない!]高校物理の公式を微分積分を使って導出

地面に立つ人物理学
図1.地面の上で静止している人
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対象読者

  • 高校物理で公式を暗記したくない方
  • 高校物理の力学を公式に頼らずに解きたい方

結論

高校物理の教科書には十分な証明や体系的な説明もなく、以下のような公式がたくさん登場する[1]

・等価速度直線運動の公式

\begin{eqnarray} &&v = v_0 + at \\ &&x = v_0 + \frac{1}{2}at^2 \\ &&v^2 – v^2_0 = 2ax \end{eqnarray}

・エネルギーの公式

\begin{eqnarray} 運動エネルギー &&= \frac{1}{2}mv^2 \\ 位置エネルギー &&= mgh \\ バネの弾性エネルギー &&= \frac{1}{2}kx^2 \\ \end{eqnarray}

高校物理では微分積分を用いない、という制約があるため、多くの公式の暗記という無味乾燥した受験勉強を強いられることになる。さらに、大学物理では、微分積分を用いて力学を勉強し直すことになる。なんという二度手間だろうか。ウンザリしないだろうか。

しかし、微分積分を用いることが許さるならば、運動方程式を書き下し、これを解くだけで問題に解答することができる。しかも、要求される微分積分は高度なものではなく、数学Ⅱ・Ⅲの知識で十分理解できるのだ。

本記事では、質点の運動方程式を微分積分によって式変形するだけで、

  • 高校物理の力学に関して多くの公式が導出できること
  • 例題の解答を通して、微分積分によって問題を解く方法

を確認する。

公式の丸暗記のつまらなさを少しでも緩和できる一助になればいいな。

力の定義;運動方程式

力とは、物体を動かす原因だ。しかし、力とは何だろうか。哲学的な問題だ。昔は妖精がモノを動かしているのが力なのではないか?と大真面目に考える人もいたようだ。

しかし、古典力学を創始したニュートンは一旦、その問いを捨て、物理現象を説明することだけをゴールに設定した。そして、以下の式(運動方程式)で、宇宙から地上までのあらゆる物体の運動が説明できることを突き止めた。ガリレオが1633年に天動説を否定した罪による裁判にかけられた僅か20年ほど後のことである。

$$ m\ddot{x} = F \tag{1}$$

  • \(m\)は質点(大きさのない理想的な物体)の質量
  • \(\ddot{x}\)は位置\(x\)の二階の時間微分、つまり加速度
  • \(F\)は力

である。

ドットは時間微分を表す。\(\ddot{x}\)は位置の二階の時間微分であり、エックス・ツードットと読む。

力とは質量と加速度の掛け算によって定義される。これ以前は、力は速度によって決まる、という考え方もあったようだ。しかし、速度ではなく、加速度が力を決定するという点が重要だ。

[注]運動方程式は慣性系でのみ成り立つ。座標系自体が加速度を持って移動する場合、物体の動きを説明するためには、慣性力を加味しなければならない[2]。また、素粒子物理では、重力と電磁気力の他に、「強い相互作用」、「弱い相互作用」という力もあるみたいだ。

位置、速度、加速度の関係

おや、加速度とは位置の2階の時間微分?なんのこっちゃ?ここを理解し、運動方程式を積分して式変形ができるようになれば、冒頭であげたような公式が即座に導出できるようになる。そのための入り口が位置、速度、加速度を相互に式変形できるようになることだ。

位置\(x\)は場所を表す座標そのものであり、微分されていない量だ。ここでは簡単のために一次元の位置座標をもとに速度、加速度について考える。

位置は時間によって変わる、つまり位置は時間\(t\)の関数である。ある時刻\(t_1\)では\(x(t_1)\)にあるし、\(t_2\)では\(x(t_2)\)にあるだろう。

速度\(v\)は位置の時間微分だ。つまり、速度は時間の関数である位置が単位時間(1秒)の間にどれだけ変化するかを表す。

$$ v = \dot{x} = \frac{dx}{dt}$$

\(\dot{x}\)はエックス・ドットと読む。

では、なぜ微分なのだろうか。例えば、1秒間での位置の変化\(\frac{x(t + 1) – x(t)}{(t + 1) – t}\)を速度として計算してはいけないのだろうか。これは1秒間の平均速度であって、その瞬間の速度を表すには不適切だ。速度を厳密に表現しようとするならば、\(\Delta{t}\)の平均速度\(\frac{x(t + \Delta{t}) – x(t)}{\Delta{t}}\)の\(\Delta{t}\)を限りなくゼロに近づければよい。この操作こそが微分なのだ。

加速度\(a\)は速度の時間微分だ。つまり、加速度は速度が単位時間あたりの変化量を表す。

$$ a = \dot{v}= \frac{dv}{dt} = \frac{d^2x}{dt^2} $$

運動方程式の立て方

どんな力が物体に働いているかを見つければ、運動方程式(式1)を立てることができる。その後は積分や問題文の条件を駆使して式変形すれば、機械的に問題を解くことができる。

古典力学では次の2種類の力を探せばよい。

  • 重力:質量が受ける力
  • 電磁気力:電荷が受ける力

力は粒子と粒子の間でで発生する。この力は同一直線上かつ互いに逆向きに同じ大きさである。これを作用・反作用の法則という。

重力は厳密には、質点同士の間でも発生する。しかし、地球の重力に比べたらゴミみたいな力なので、無視してよい。つまり、重力は地球由来のもののみを考えればよい。

電磁気力は、基本的には電気的に中性な物体に関しては発生しない。しかし、中性な物体であっても、他の物体と接触するときに抗力としての電磁気力が生じる

まとめると、次の2つのみを気にすれば、力を見つけることができる。

  • 地球の重力
  • 物体の接触面

例えば、質量\(m\)の人が地面に立って静止しているとき、つまり\(\ddot{x} = 0, \ddot{y} = 0\)のとき、運動方程式は以下となる。地面との接触による力を\(F\)とおく。

地面に立つ人

図1.地面の上で静止している人

$$x方向:m \cdot 0 = F_x$$

$$y方向:m \cdot 0 = F_y – mg \Leftrightarrow F_y = mg$$

人が地面から受ける力は反射的に\(mg\)だと考えるのは間違いだ。。全ては運動方程式を解くことから導かれる。人との接触面(地面)がある。だから、なにか抗力が働いているはずだ。地面から\(x\)方向の抗力はゼロ、\(y\)方向の抗力が\(mg\)であることは運動方程式を解いた結果、はじめて分かるのだ。

また、本来なら、作用・反作用の法則に従って、地球にも\(+y\)方向に\(mg\)の力がかかるが、ゴミみたいな力なので、図1に描くのは省いた。

質点の落下の公式の導出

では、位置、速度、加速度の関係、運動方程式の立て方を確認したところで、質点の落下の公式を微分積分を用いて証明してみる。

高校物理での落下の公式には以下のようなものがある。

二次元で考える。今、質点に接触している物体はない(空気が接触しているが、ここでは無視する)。

最初、質点は\(x=0, y=h\)の位置にあるとし、\(x\)方向に初速\(v_0\)を与える。また\(y\)方向の速度は0とする。

このとき、運動方程式は以下となる。

$$x方向:m\ddot{x} = 0$$

$$y方向:m\ddot{y} = -mg$$

これを式変形すると、\(\ddot{x} = 0, \ddot{y} = -g\)となる。これを時間で積分すると、

$$ \dot{x} = C_1 \\ \rightarrow x = C_{1}t + C_2 $$

$$ \dot{y} = -gt + D_1 \\ \rightarrow y = -\frac{1}{2}gt^2 + D_{1}t + D_2 $$

初期条件をもとに積分定数を決定する。

$$ v_x(0) = \dot{x}(0) = C_1 = v_0 \\ x(0) = C_{1} \cdot 0 + C_2 = 0 $$

よって、\(x(t) = v_{0}t\)

$$ v_y(0) = \dot{y} = -g \cdot 0 + D_1 = 0 \\ y(0) = -\frac{1}{2}g0^2 + D_{1} \cdot 0 + D_2 = h $$

よって、\(y(t) = -\frac{1}{2}gt^2 + h\)

エネルギーの導出

角運動

参考

  1. 高校物理公式一覧
  2. 慣性系・非慣性系
物理学
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