算数が数学より難しい理由 ~違いや定義を明確にして解説~

スポンサーリンク

対象読者

  • とある自称数学得意マンがなぜ算数の方が難しいと思うか知りたい方
  • 高校数学までの知識がある方

結論

もちろん、数学の方が算数よりも高度だ。しかし、数学を理解する土台は算数であり、算数の理解には数に対する先天的・本能的なイメージ力が必要となる。

ヤバイ先生

マイナスにマイナスを掛けると、なぜプラスになるか

なぜ 1 + 1 = 2 なのか

だって?

当たり前だろボケ!

イメージすれば分かるだろ(怒)

算数を教える方が、数学を教えるよりも難しいのはそのためだ。算数は、説明不可能なほど基本的なイメージに帰着するからだ。

そもそも、算数は数学に含まれており、数学の一部であるため、どちらが難しいか比較できないのだが、上のような意味で、算数は数学よりも難しい

以下では、

  • 基本的なイメージ(算数)
  • そのイメージを土台とした理論(数学)

の理解の進め方について見ていくことで、本記事の主張の裏付けをしていく。

数学と算数の違い

その前に、それぞれの定義を示し、違いを明確にしなければならないだろう。

以下に自分なりに定義をまとめた。

数学とは公理から出発する理論体系

数学とは、公理定義から出発して、証明という手続きを通して定理を積み重ねていくことで、ある対象(量、構造、空間など)に関して理論を与える学問である(※)。

※用語説明

  • 公理:議論の出発点となる、正しいと定めた主張(とにかく、この主張は正しい!って根拠はないけど決めちゃいます、て感じ)
  • 定義:議論を円滑に行うための取り決め
  • 証明:正しい主張から、別の主張が正しいことを導く手続き
  • 定理:公理を元に証明された主張(定理を用いて証明された定理も元を辿ると公理に行き着く)

算数とは数学入門以前[1]

算数とは、数学の入門編として小学校で習う科目である。数学との本質的な違いはなく、数学の中の初歩的な部分について訓練するためのものが算数だ(※)。

1例として、以下に数に関する内容のまとめを抜粋する。

  • 0から120程度までの数(1年)、1万までの数(2年)、万(2~3年)、億(3~4年)、兆(4年)など
  • 数直線(3年)
  • 小数(3~5年)
  • 分数(3~6年)
  • 偶数と奇数(5年)
  • 倍数(5年)
    • 公倍数と最小公倍数(5年)
  • 約数(5年)
    • 公約数と最大公約数(5年)
  • 比(6年)

※初歩ほど難しい?

初歩を言い換えると基礎だ。通常、基礎よりも、応用の方が難しいイメージがある。基礎コースよりも、応用コースの方が難易度が高いことが多い。

しかし、その事情は学問においては逆転する。応用とは、より限定的な範囲でのみの理論の適応を意味する。逆に言えば、基礎はより広範囲を扱うことを意味する。つまり、基礎の方がカバーする領域が広く、一般的・抽象的で難しい。

数学と算数の接点

数学の前提(公理や定義)への信頼や理解を深める訓練が算数だと思う。

公理や定義に対してイメージが湧かない状態で、やれ三角関数の合成だの、内積だの言われても、理解できるわけがない。三角関数についてイメージできていないのに、三角関数を用いたより発展的な内容を理解しろと言われても、無理ゲーだろう。イメージする土台が算数だ

例えば、算数の図形の理解が数学の基礎、つまり公理や定理の土台となっていることを確認する。

公理は根拠もなく決められるが、無茶苦茶に決められている訳ではない。ヒトが持つ基本イメージと照らし合わせた結果、説明も保証もできないけど、正しいと思われるものが公理として採用される。「平行な直線は交わらない」とかだ(ユークリッド幾何学)。ユークリッド幾何学が前提となって、三角形の内角の和が180°だとか、錯角は等しいとかが導かれる。

定義もイメージを押さえて理解できるかが重要だ。例えば、三角関数\(\cos\theta\)とは、単位円の\(x\)座標を示しおり、その意味を考えれば、2つのベクトルにおける同じ方向の成分を抽出する内積が\(\cos\theta\)を用いて表されることが理解できる、といった具合だ。その根底にはユークリッド幾何学の理解がある。

発展的な内容(数学)を理解するには、前提の理解というハードルがある。数学は算数より難しいのだろうか。前提での躓きが積み重なっただけではないだろうか。数学が難しいのは、算数という土台が難しいからではないのか。

次に、数の概念が以下に拡張されていったかを見る。

数の概念の進化は算数の難しさを教えてくれる

ヒトは数字を指を使って数えてきた。その名残は10進数を意味する「digit」が指という意味を併せ持つところにある。

指で数え上げあられる数値を自然数と云う。これは\(1,2,3,..\)というような、正の整数を表す。自然数こそが、もっとも基本的な数の概念といって差し支えない。

そこに、インド人がゼロという概念を持ち込んで、位取りの考え方に発展した。何もないことを表すことは画期的だったのだ。

さらにそこから発展して、有理数やマイナスの整数、果ては複素数というように、数の概念は拡張していった。

算数では、自然数を超えて、分数やマイナスの数を扱う。そりゃ難しいに決まっている。ヒトが苦戦しながら拡張してきた数についていきなり問われるのだから。以下に数を拡張することがどれだけ難しいかの例を示す。

ピタゴラス教団による無理数の否定

三平方の定理、別名はピタゴラスの定理で有名なピタゴラスさんは、マイナスの数や無理数といった概念を認めていなかった。世界は比率で表すことができると信じていた。

確かに、割り切れない数がある、というのは美しくないし、割り切れない数なんてイメージできないので、この信条は間違っていないように思える。

ピタゴラスは怪しげな数学の教団を設立していた。そこでは、数学の研究が進められていた。1辺の長さが1の直角二等辺三角形の斜辺の長さは\(\sqrt{2}\)となり、比で表すことができない無理数となる、ということをある者が発見する。

これはピタゴラス教団の信条、つまり世界は比で表すことができるという教義に反することになる。教義に反するような発見は容認することができないため、無理数の発見者は処刑された。

このように、直観に反する無理数を受け入れるのは難しかったのだ。同様に、私も算数で苦戦した話を以下で述べる。

分数の割り算が難しかった

私は数学が得意だ(※)。でも、小学生の頃、分数の割り算を理解するのに苦戦した。分数で割るときに分子・分母を入れ替えて掛けるルールが理解できなかった。例えば、

$$5\div\frac{3}{4}$$

を解け、という問題があるとする。数値だけ与えられてもイメージできないので、何か具体的なものを当てはめてみる。例えば、5個のリンゴを3/4人で分ける、と具体的に考えてみるが、

??

イメージできない。3/4人というのが不自然だ(自然数でない)からだ。

しかし、悩んだ末に私は、分子分母を同じ数で掛けても値は変化しない、という性質に気づいた。これは、10個を2人で分けるのも、20個を4人で分けても、1人あたりの数は変わらない、ということが計算でも分かるし、イメージも湧くからだ。

ということで、分子、分母に4を掛けて、不自然な割る値を自然な値に修正した。

$$5\div\frac{3}{4}=\frac{5}{\frac{3}{4}}=\frac{5\times4}{\frac{3}{4}\times{4}}=\frac{20}{3}$$

なるほど、20個のリンゴを3人で分けるのか、これならイメージできるぞ。

 む?

これは分数の分子分母を逆にして掛けた結果と同じじゃないか。分数による割り算のルールを理解した瞬間だった。

分数の割り算に限らず、算数の難しいところは、公式というほど大仰なものがないが故に、数のイメージに対するウェイトが大きくなるところだろう。逆に言えば、数学では、よく理解できてなくても、公式に当てはめられれば、偽りの「解いたぜ」感を味わえてしまう。

※数学が得意だと自己評価した理由

  • 数学の模試で学年1位を取ったことがある(高校生の頃)
  • 大学数学を趣味で学んだ(ルベーグ積分で挫折したけどw)
  • 社会人になってプログラマとして仕事をしているが、そこでも数学の知識を活かすことができる(主に大学で習う線形代数)

 数をイメージする、というハードル

私は塾講師のアルバイトで数学を教えていたことがある。なぜマイナスのマイナスはプラスなのか。

  • 敵(マイナス)の敵(マイナス)は味方(プラス)
  • 借金(マイナス)が減れば(マイナス)嬉しい(プラス)

と説明してみたけど、納得してもらえなかった。私も仮に、分数の割り算について他人から教えてもらったとしても理解できたかどうか怪しい。基礎的すぎる話をいかに他人から教えられても、腹の底には響いてこない。自分が持つ数学的直観(イメージ)との対話を通じて、「マイナスのマイナスはプラス」だとか、「分数の割り算は分子分母をひっくり返してかけるだ」とかが心の底から当たり前である、と納得しなければならない。

学習とは、経験回数が増えるごとに上達することだ。確かに、数値の1というイメージは経験が増えても何も変わらない。経験によって、イメージが改善されないという意味で、数のイメージは先天的(ア・プリオリ)だ[2]。だとすれば、数学的直観を教えることは不可能だ。指導側は、受け手が既に持っている数学的直観を数式に翻訳するお手伝いができるだけだ

数学は、「このように公式を適用しましょう」と言えちゃうけど、算数にはそれができない。そこに算数の難しさがある

こんな偉そうに講釈垂れているが、わたくし、大学数学で挫折しました(笑)。

おまけ:数学は役に立つ

私は小学校から大学まで数学を学んできた。現在、仕事で微分積分や行列などの数学の理解が必要だし、投資では等比数列が生きている。いやぁ、数学なんて何の役に立つの?って思っていたのに(笑)。

算数を積み重ね、数学を勉強してきて良かった!

参考

  1. 算数[wikipedia]
  2. 哲学入門 [バートランド・ラッセル]

コメント

タイトルとURLをコピーしました